「漢字はいくつあるのか」という問いは,たとえば「英語で使われる単語はいくつあるのか」という問いと同じように,永遠に答えを定めることができない問題です。日本の小学校で学習する漢字は学習指導要領によって1006字と決まっており,また日常生活における漢字使用の目安とされる常用漢字は2136字あります。しかし「飴」や「蝶」,「碗」など,それに含まれていないのに世間でよく使われる漢字もありますし,漢字の本家である中国には,日本人が見たこともない漢字があちらこちらに氾濫しています。たとえば中国の空港で搭乗手続きをするカウンターの掲示に,「锂」という漢字がありました(図のいちばん左)。その掲示にはパソコンやスマホのイラストが描かれ,またこの漢字のあとに「电池」(電池)とあるので,はじめてこの字を見た人でも,それが《金》で意味を,《里》で発音を示す形声文字で,全体でリチウムという金属を表しているということがわかるでしょう。

“有多少汉字?”这个问题,像“英语中使用的单词有多少?”这样的问题一样,是永远无法得到定论的问题。根据学习指导要领,在日本小学要学习的汉字有1006个,再者,作为日常生活中使用汉字标准的常用汉字有2136个。但是,还有像“飴(糖)”、“蝶(蝴蝶)”、“碗(盛东西的碗)”等等不算在常用汉字里,但人们却经常使用的汉字,而在汉字的老家·中国,还有着许许多多这样那样日本人根本没见过的汉字。比如,在中国机场办理登机手续的柜台布告上,有“锂”这个汉字(图中最左)。布告中画着电脑和手机的插画,而且这个汉字后边还跟着“电池(電池)”两个字,第一次看见这个字的人也能明白这是表示“金属”的、发音为“里”的形声字,整个字是表示“锂”这种金属的意思。

リチウムは元素記号のひとつで,「化学元素周期表」でははじめの方,No.3に配置されています。日本でも化学元素周期表ではリチウムはLi,他にもナトリウムはNa,カルシウムはCaとアルファベットで表されますが,中国の元素記号表ではアルファベットの他に漢字表記があって,ナトリウムには「钠」,カルシウムには「钙」という漢字が書かれています。中にはNo.26の鉄,29の銅,47の銀,50の錫など,私たちにもなじみがある漢字(簡体字になっていますが)もありますが,しかしほとんどは多くの方が見たこともない漢字ばかりです。それに対して,No.1の「H」とかNo.6の「C」は中学生でも知っている元素ですが,それを漢字で「水素」とか「炭素」と書いても,中国人には通じません(もちろん「酸素」も同じです)。中国ではHのことを「氢」,Cのことを「碳」と書き,日常生活でもたとえば水素爆弾は中国語では「氢弹」,カーボンファイバーすなわち炭素繊維は「碳纤维」と書かれます。

锂是一个元素符号,是“化学元素周期表”前几位中位于第3的。在日本,化学元素周期表中锂是用Li表示,其他还有钠用Na、钙用Ca,是用英文字母表示,而在中国的元素周期表当中,除了英文字母还会用汉字来表示,比如Na写成“钠”、Ca写成“钙”。当中第26的铁、第29的铜、第47的银、第50的锡等,有很多我们也很熟悉的汉字(虽然是用简体字来表示),但大多净是一些基本所有人都没见过的汉字。而第1的H和第6的C是中学生也知道的化学元素,日语中汉字写作“水素”和“炭素”,中国人是看不明白的(当然,“酸素”也看不懂)。在中国,H写作“氢”、C写作“碳”,在日常生活中,水素炸弹在中文中是“氢弹”,carbon fibre也就是碳素纤维写作“碳纤维”。

これらの漢字のほとんどは,近代化学が西洋から伝わった時に元素を表すためにはじめて作られたものです。現在の元素記号表に見える漢字だけでも優に百個を越えますが,これから先に新しい元素が発見されたり,作りだされたりしたら,中国ではその元素を表すためにまた新しい漢字が作られるにちがいありません。極端な話ですが,もし元素の数が無限であるとすれば,それに対応して,漢字の数も無限であるということができるかも知れません。

这些汉字大多数是近代化学从西洋传播过来时,中国为了表示元素而创造的。仅仅是在如今的元素周期表当中能够看到的汉字,就足足超过了100个,从现在开始,新的元素被发现、被创造出来的话,毫无疑问会创造出一个新的汉字。虽然是极端的说法,但若元素的数量是无限的话,与之对应,也许汉字的数量也会变为无限。

無限は大げさですが,漢字がこのようにたくさん作られてきたもっとも大きな理由は,漢字が現在に至るまで,一貫して表意文字として使われてきたという事実にあります。表意文字にはそれぞれの文字に固有の意味があります。そしてそのことを逆にいうならば,それぞれの文字は,ある特定の事物や概念を表すために作られたということになります。この事物とか概念というものは,人間が暮らしている環境においてはいわば無限に存在すると考えられます。

虽然无限有些夸张,但汉字能被如此大量创造出来最大的理由是,汉字至今为止,一贯是作为表意文字来使用的事实。所谓表意文字,各个文字当中都有固有的意思。反过来讲,每个文字是为了表示特定的事物或概念被创造出来的。而人类生活的环境当中,事物和概念是无限存在的。

事物や概念は,文字のない時代には口頭の音声によって表現されていましたが,時代が進んでそれを文字で表記するようになってきました。その時に,アルファベットや日本の仮名のような表音文字を使っていれば,たかだか数十種類の文字の組みあわせによって,事物や概念を表すことができます。しかし漢字は表意文字ですから,それぞれの事物や概念を指し示すために個別の文字を作るしか方法がありませんでした。公園でポッポッポと鳴いている鳥を表すために「鳩」という漢字を作り,コケコッコと鳴く鳥を表すために「鶏」という漢字を作り,大空を雄々しく舞う鳥を表すために「鷲」という漢字が作られました。アルファベットや仮名にくらべて漢字の数が格段に多くなったのは,表意文字としての宿命だったのです。

事物和概念,在没有文字的时代是使用口头的声音来表现的,随着时代的推进,就用文字表记下来了。这时,要是使用英文字母或日文假名这样的表音文字的话,顶多用数十种文字的组合就可以表达事物和概念了。但汉字是表意文字,为了表示各种不同的事物和概念而创造出不同的汉字。为了表示在公园中popopo叫的鸟创造了“鳩|鸠”这个汉字、为表示咯咯咯叫的鸟创造了“鶏|鸡”这个汉字、为表示在天空翱翔的鸟创造出了“鷲|鹫”这个汉字。与英文字母和假名相比,汉字的数量格外多,这是作为表意文字的宿命。

それに加えて,漢字には悠久の歴史があります。漢字の字数が増加した理由の二つ目は,その使用時間の長さにあるといえるでしょう。漢字は商時代の甲骨文字から数えても,現在までに3000年以上の歴史を有しており,この間にたえまない文化の発展がありました。社会には新しい物や概念がどんどんと登場し,それに応じて,さらに多くの漢字が新たに作られるようになったのです。そしてその文字はさらに近隣の諸国にも伝播して,それぞれの国で言語表記に使われました。その時,本来の漢字では表現できない物について,それぞれの国で新しい漢字が作られました。

并且汉字还有悠久的历史。汉字的字数在增加的第二个原因,可以说是因为汉字使用时间之长。汉字就算从商朝的甲骨文开始计算,至今也已经有3000年以上的历史,在这之间文化在不间断地发展。社会中新的事物以及概念在不断登场,与之相对应,更多的汉字被创造出来。而且,文字还传播到近邻的诸多国家,在各个国家被用作表记语言。而这时,各个国家又创造了新的汉字来表示原来汉字无法表现的东西。

古くから「地大物博」(大地は広く,物産は豊富である)という言葉で形容される中国ですが,海産物に関してはいささか貧弱であって,漢字のふるさとである黄河流域に暮らした古代の中国人は,おそらくイワシという魚を見たことがありませんでした。黄河にはコイとかフナという魚がいるので,「鯉」とか「鮒」という漢字が中国で作られました。しかし黄河にはイワシもタイもブリもマグロもいませんから,中国人がそんな見たこともない魚を表す漢字を作るはずがありません。それに対して四方を海に囲まれた日本では,生活物資の多くを海から得てきました。なかでも魚類は種類が非常に多く,そこには古代中国の食生活に登場しないものも多く,結果としてその魚を表す漢字が存在しませんでした。

中国自古就被形容为“地大物博(地域辽阔、物产丰富)”,但海产方面却不算丰富,在汉字的故乡——黄河流域居住的古代中国人,恐怕都没有见过沙丁鱼这种鱼。在黄河有鲤鱼和鲫鱼,所以中国创造出了“鲤”和“鲋(同鲫鱼)”这两个字。但是因为黄河流域没有沙丁鱼、鲷鱼、鰤鱼、金枪鱼,所以中国人不可能用汉字来表示这些没有见过的鱼。而在四面环海的日本,生活物资多来源于海洋。鱼类的种类非常多,有很多在古代中国的饮食生活中没有出现过的东西,所以表示这种没见过的鱼的汉字也就不存在了。

表記する漢字がない魚を,はじめは「伊委之」(イワシ)というように万葉仮名の方法で書いていましたが,やがてどこかの誰かが「鰯」という文字を創作し,文書などの表記に使うようになりました。ほかにも,ハタハタという魚は晩秋から初冬にかけて,秋田県など日本海岸で雷が多く鳴る季節に海岸へやってくることから,「鱩」と書かれました。こうして《魚》をヘンとした大量の国字(和製漢字)が作られました。寿司屋の湯飲みに書かれている魚ヘンの漢字は,その大部分が国字であり,同様の現象が植物についても指摘できます。

一开始是像“伊委之”(iwashi)这样用万叶假名来表记没有汉字可代表的沙丁鱼,最终某地的某人创造出了“鰯”这个文字,于是人们渐渐开始用这个汉字在记录文书资料时表示沙丁鱼的意思。除此之外,名为叉牙鱼(鱩、雷鱼)的鱼,会在秋田县等日本海岸地区,晚秋到初冬多雷的季节,游到海岸,所以写作“鱩”。像这样以“魚”作为偏旁部首,创造了大量的和制汉字。寿司店的茶碗上写着的鱼字旁汉字中,大部分是和制汉字,同样的现象在植物中也有。

上のような理由によって漢字は膨大な数をもつようになり,この結果,漢字の総数は5万とも6万とも言われるようになりました。日本で刊行されている 『大漢和辞典』(大修館書店)には約5万字が収録されていますし,中国で出版されている『漢語大字典』(四川辞書出版社湖北辞書出版社刊行)には約6万字,『中華字海』(中華書局)には,なんと8万字以上も収められているそうです。

因为上述理由,汉字拥有庞大的数量,结果,据说汉字的总数在5万甚至6万。在日本出版发行的《大汉和辞典》(大修馆书店)当中收录了大约5万字,在中国出版的《汉语大字典》(四川辞书出版社·湖北辞书出版社发行)当中约有6万字,《中华辞海》(中华书局)当中,竟然收录了8万字以上。

しかしこのように数万ともいわれる漢字のすべてを,歴代の中国人や日本人が実際に使いこなしてきたわけではありません。漢字の総字数とは歴史的な蓄積の結果であり,これまで一度でもなにかのメディアの上に出現した漢字を網羅した総体にすぎません。それぞれの時代に使われた漢字はそれほど多くはなく,どんなに多くてもせいぜい1万もあれば十分に用は足りるものでした。中国最古の漢字字書である『説文解字』(後漢許慎撰)の総収録字数が約9300であり,また現在の日本での一般的な漢和辞典がだいたい1万前後の漢字を収めているのは,きわめて妥当な数であるといっていいでしょう。

但像这样数量达到数万的汉字,并不是所有都被历代的中国人或日本人实际使用过。汉字的总数是历史累计的结果,这不过是网罗了至今为止哪怕只有一次出现在某一媒介上的汉字的总数罢了。各个时代所使用的汉字并没有这么多,无论总数多大,对于日常使用来说1万字绰绰有余了。中国最古老的汉字字典——《说文解字》(后汉·许慎 撰)的总收录字数约为9300字,再者,如今日本,一般的汉和词典大约收录1万左右的汉字,可以说是十分妥当的数字了。

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